視覚障がい者の夢

Oさんは海外赴任中に交通事故にあい両目を失明した。

当時を振り返り彼は言う、

「仕事はどうなるんだ」

「会社を辞めなくてはいけないのか」

「妻や子供をどうやって養って行けばいいのか」

そんな時、音声ソフトの入ったパソコンと出会った。

それは希望の光だった。

自宅から会社まで徒歩と電車で通勤。

仕事をせず帰宅の毎日。

パソコンのキーボードをブラインドタッチが出来るように猛練習。

メール、ワード、エクセルが出来るようになった。

会社に対して、音声パソコンを利用すればこんなことが出来るとプレゼン。

復職への道が開けた。

しかし、復職後の彼に仕事はなかった。

仕事をせずに一日を過ごし給料をもらう。

こんなにつらいことはなかった。

彼は人脈やITの知識を駆使し、グローバルな経済情報を社内に発信するようになった。

そして、社内向けのメールマガジンを配信する業務を確立。

多くの同僚に喜ばれている。

彼の存在は周りの健常者に影響を与えだした。

街で白杖を持つ人を見かけたら「何かお手伝いできることはないですか?」と声を掛けるようになったと言う。

彼もまた一人では生きて行けないことを知った。

さりげない手助けに、心ある一言に、人の「優しさ」を知った。

そこには新たな「心の輪」が生まれていた。

「Oさん、目が見えなくなって、何か良かったことってありますか?」

私は聞いた。

「ありますよ。視覚障がい者は心のきれいな人が多い。典型的な会社人間だった私には絶対に出来なかった利害関係のない一生ものの友人がたくさんできた。この人達は私の一生の宝物です。」

彼は視覚障がい者との付き合いの中で、彼らの厳しい現状を知った。

視力が衰えるにつれて仕事を続けられなくなりやむなく退職する仲間がいることだった。

悩んだ末行きついた結論は、彼自身が健常者の中で働き続けることだった。

依頼された講演は引き受けた。

マスコミの取材にも応じた。

一般企業で働く視覚障がい者の自分を見てもらうようにした。

「私の姿を見て、社会の意識、企業の意識が少しでも変ることを願っています。」

彼は清々しく語ってくれました。