命のための命

Life for Life

-ライフラインの集いより-

ある村に双子の兄弟がいました。顔はそっくり瓜二つ。でも性格は全然違っていました。

兄のセバスチャンは優しく働き者。村の人みんながセバスチャンを褒め称えていました。

弟ルイスはまったく逆。怠け者。おこりんぼう。酒ばかり飲んで酔っ払っている。

ある日、弟は血相を変えて兄の前に現れます。

「お兄ちゃん、どうしよう。オレ、殺す気なんてなかったんだよ」血だらけのシャツに血だらけのナイフを持ったルイス。

「ルイス、その服を脱げ!オレの服を着ろ!山に逃げろ!帰ってくるな!」セバスチャンは叫びました。

何日、何カ月、何年、隠れていたのか分かりません。

「オレ、なんてことをしたんだろう」

「オレ、どうしたらいいんだろう」

思い出すのは、セバスチャンの優しさだけでした。

「アイツだけだった。いつもオレの味方してくれた。いつもかばってくれた」

「会いたい。会いたい。セバスチャンに会いたい」

ルイスは村に帰っていきました。

酒場のドアを開け、客に声を掛けました。

「昔、この辺で殺人事件がありませんでしたか?」

「あったよ。そりゃぁ悲惨だったぜ」

「犯人はどうなったのですか?」

「あいつバカだよ。血だらけのシャツを着て、血だらけのナイフを持って、ボーッて突っ立てたんだ。すぐ捕まったよ」

「それでどうなったんですか?」

「死刑!」

「死刑・・・」ルイスは耐えられず店を出ました。

「ボクがセバスチャンを殺したんだ」

ルイスは村長さんの家に行きました。

「村長さん、ボクです。ボクが殺したんです。ボクが犯人です。死刑になったのは\ボクの兄です」

「終わったんだよ。そこにあるのは犯人のカバンだ。弟なら持って帰ってくれ」

ルイスは家に帰ってカバンを開けました。

中に一通の手紙が入っていました。

愛するルイスへ

今日、ボクはキミの血に染まったシャツを着て死刑台に行きます。もし、この手紙を読むことがあったら、キミはボクの真っ白なシャツを着てほしい。そして、生きてほしい。

何回も、何回も、ルイスは読みました。

涙で文字が見えなくなりました。

セバスチャンはイエス・キリスト。ルイスは私たちのことです。

私たちが神を愛したのではなく、神さまが私たちを愛してくれているのです。