立教大学入学式で総長が紹介した読売新聞の「窓」というコラムです。
大谷昭宏さん(ジャーナリスト)が書かれたものです。
女子高生のA子さんは足が悪くて普通に歩けません。
そんな彼女が水泳大会のクラス対抗リレーに選ばれます。
男女2人ずつ4人の選手を出して、一人が25m泳いで競争します。
クラスのいじめっ子が、「A子は3年間体育祭にも水泳大会にも出ていない。3年最後なんだから、A子に泳いでもらったらいいじゃない」と意地の悪いことを言ったからです。
A子さんは、お母さんに泣いて相談しました。
ところが、いつもはやさしいお母さんが、この日ばかりは違いました。
「お前は来年就職するんだろ。会社でお前ができない仕事を言われたら、お母さんが『うちの子にこんな仕事をさせないでください』と言いに行くの?たまには、そこまで言われたら『いいわ、私、泳いでやる。言っとくけど、うちのクラスは今年は全校でビリよ』と、1回くらい言い返してきたらどうなの」とものすごく怒ります。
A子さんは泣きながら、25メートルを歩く決心をし、そのことをお母さんに告げようとしてびっくりしました。仏間でお母さんが髪を振り乱し、「A子を強い子にしてください」と必死に仏壇に向って祈っていたのです。
水泳大会の日、水中を歩く泳げないA子さん。
まわりから、ワァワァと奇声や笑い声が聞こえてきます。
彼女がやっとプールの中ほどまで進んだその時です。
一人の男性が背広を着たままプールに飛び込みA子さんの横を一緒に歩き始めました。
それは、この高校の校長先生でした。
「何分かかってもいい。先生が一緒に歩いてあげるから、ゴールまで歩きなさい。はずかしいことじゃない。自分の足で歩きなさい」
一瞬にして、奇声や笑い声は消え、みんなが声を出して彼女を応援しはじめました。
長い時間をかけて彼女が25メートルを歩き終わったとき、友達も先生も、そして、いじめていた子たちもみんな泣いていました。

